新規登録 ログイン
やはりイエスキリストにより、救われた元悪党は数多くいます。
kayuma 投稿 - 2020/08/13 更新 - 2021/05/19 0 Comments 365 Views
good投票
まだこの作品をgoodと言った人はいません
 明男は、ふいに僕の目を見つめて言った。
「俺、いずれ、組織に殺される運命なんだ。
 しかし、その前に中学時代の君と
人生を狂わせてしまった由岐にお詫びを
しなければ、死んでも死にきれないよ。
 組織は俺を追っている最中なんだ」

 僕は、答えようがなかった。
 まあ、アウトローというものは伝説の親分
井岡組長のように、いずれは殺される運命である。
 ふと、クリスチャンの母親の言葉を思い出した。
「同じ死ぬなら、イエスキリストのために死になさい。
 そうしたら、殉死となって天国にいくから」
 なんでも、イエスキリストは人間の罪の身代わりとなって
十字架にかかって下さったという。
 ということは、十字架は処刑道具だったということか。
 
 僕は思わず、目を閉じて明男のために祈っていた。
「イエス様。中学時代の友人、明男は今、殺されかかっています
 どうか、お救い下さい。イエスキリストの名において祈ります
 アーメン」
 気が付くと、明男は涙を浮かべていた。
 ちょうどそのとき、店の常連おばさんが明男を見て言った。
「あなた、明男君だったっけ。ほら、中学時代、参考書を貸した」
 明男は、なつかしそうに目を細めた。
 その仕草は、行方不明になった明男の母親にそっくりだった。
「ねえ、今から私の家に来ない? といっても、小さな教会だけどね」
 明男はキョトンとした顔をしたが、すぐに真顔に戻った。
「僕、もうすぐ死ぬ運命なんです。でもその前に、人間として
できることを残しておきたい」
 明男は、おばさんの家の小さな教会に行くため、伝票を
置いて席を立った。

 

タグ : [ 編集 ]

0 Comments

Add a comment - 1000文字以内でご入力下さい。HTMLタグは使えません。
コメントを投稿するにはログインして下さい。初めての方は無料のユーザー登録を行って下さい。
ログイン 新規登録