新規登録 ログイン
マンボウとカニと
aozora0900 投稿 - 2020/05/27 更新 - 2020/05/27 0 Comments 296 Views
good投票
まだこの作品をgoodと言った人はいません
あたしのマンボウは
涙の海の浜に着いて
塩辛さでやられていた

とげとげ日射しに目を細めて
お昼ご飯をぜんぶもどした

キレイ好きなカニ
砂浜のげろを見て
頭を抱えて泡をふく

通りかかったニンゲンは
マンボウもカニも嫌いになった

マンボウは自分も嫌いになった

夜がきて1日が終わる
こんな今日のことを
思い出す日が来るということ
それだけで悲しい


負の遺産を積み上げて
心持つものは長生きをする
この場合マンボウやカニはどうか知らないけど
少なくとも――――

せいいっぱい考えているんだ
少しでも幸福になりたいから
それでも誰にも分かりっこない後悔を秘める
鬱くしき
からくりを備えた生き物たち


あたしのマンボウは
昨日突然の発作で
亡くなりました

なんとか海に帰って
お家に戻るところでした

キレイ好きなカニ
波が洗った砂浜を歩いて
掃除当番をお休みした

通りかかったかもめに
カニはくわえられてゆきました

ニンゲンは昨日を思い出して顔をしかめた


マンボウを悲しむのはあたしのはず
だってあたしのマンボウだから
カニを悲しむのは砂浜だ
だって砂浜を掃除していたから
…………そう思う


かなしみがこみ上げて
心持つものはまばたきをする
この場合マンボウやカニはどうか知らないけど
少なくとも――――

せいいっぱい考えてしまうんだ
だれかの分までおせっかいに
今夜も余分に涙を流すのは
鬱くしき
からくりを備えた生き物たち
タグ :
*
[ 編集 ]

0 Comments

Add a comment - 1000文字以内でご入力下さい。HTMLタグは使えません。
コメントを投稿するにはログインして下さい。初めての方は無料のユーザー登録を行って下さい。
ログイン 新規登録