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月のいない黒い夜に 扉を開けて
痛いほど冷たい空気に身をさらす
ときどき思い返せば なんだかむなしい
まだ小さな頃の夢を叶えた末が
火の気のないコンロの換気扇を回して
いいだけ煙草ふかしたら
しわくちゃのソファに倒れ込む
願い手放せなくて 大切なものを突っぱねて
手に入れたのは未だかつてない自由
今日も陽が昇れば どこかで鐘の音響く
まるで沈み続ける者を 蔑み笑うように
少し大きなベッドは ずっとまっさら
売りに出せば良さげな値札もつきそう
幾つか季節を越し 噂も立たなくなった
流れ星みたいに消えてしまったのか
満員電車を待つ人の群れを目にすれば
何もかも嫌になって
向こうに踏み出したくなるけど
勇気が足りなくて 怖いものばかり切り捨てて
押し付けられたのはこの平穏の酬い
今日も陽が昇れば 静かに鐘の音轟く
道を踏み外した者を 誰も気に留めぬまま
願い手放せなくて 赦されない人になって
今この手にあるのは自由と一枚岩の至福
もう聞こえやしない 鐘も祝福の歓声も
道を踏み外した者は 誰のことも気に留めない
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