真っ暗いトンネルを抜けると
真っ白な世界が そこに広がるという
「人情までは冷たくはない」
母は呟いたが
余所者に差し伸べる手は見えず
居場所は在れども 拠り所はなく
孤独を嘆くまま
薄情な世界を 凍てつく海を泳ぐ
懐かしい景色を朧気に浮かべて
渇れかけた涙を ぽとりと落とせば
「辛く長い道程だろう」と
師の言葉が
痛むほど身に沁み続ける
死に物狂いでは 何一つ得られず
行くべき途に迷い
薄情なこの時を 色のない日々送る
朝昼晩と降り注ぐ雪の景色が
人気のしない街の 彩りを奪って
取り柄にしていたはずの
若さは塵となり
暖かみの消えた布団に倒れ込む
居場所は在れども 拠り所はなく
孤独を嘆くまま
薄情な世界を 凍てつく海を泳ぐ
薄情な世界を 果てなく永久に行く
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2023/01/05