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私は二十歳のアルバイト店員 私の家は父子家庭
家事はみんな私の仕事というよりも 義務
家事のできない父親は 私がいなければ
一日たりとも生きていけない
もちろん遊びにいくこともできないし
これといった趣味もない
このまま 華やかさとは無縁の
地味な人生を歩んでいくのだろうか
私は 飲食店のアルバイトをしながら
自分なりに生計を立てていたが
将来の確証はなにひとつ見いだせなかった
そんなある日 アルバイト先で
自称金持ちのお嬢さんで 歌手志望だという
まあまあ美人の女子大生より子から
「私のお古だけど このスカート貸してあげるよ」という
誘いを受けた。見ると、いかにも高価そうな
レースとフリルをあしらった二段重ねになっている
ファッション雑誌に掲載されていそうなスカート
「えっ いいの? じゃあ、お言葉に甘えて
遠慮なくお借りします。あさって帰すね」
より子曰く「いいわよ。このスカートもう
はき古したものだから、あさってとは言わなくても
一週間後に返してね」
私の大好きな花柄がアクセントになっていて
内心ラッキーと心はアゲアゲに弾んだ
二日間 私は飲食店にスカートを着用してきた
「よく似合うよ」と言われ ちょっぴり得意になった
より子などは「私より似合うよ。ひょっとしてモデルに
なれるんじゃない?」などと歯の浮くような
お世辞を言い出す始末だった
しかし このスカートの貸し借りが
のちの私の人生を狂わせることになるとは
そのときは 夢にも思わなかった
三日後、私は約束通りより子にスカートを返却した
ところが次の日 より子は血相を変えて
私に詰め寄った
「実はこのスカートは、私の先輩のものだったのよ
あなたは返却するとき、スカートに染みがついたと
相手はカンカンよ」
「えっ、そんなバカな。染みなどどこにも
ついていなかったわ」
より子はなぜか堂々と「いや、虫眼鏡で調べたら
確かにシミがついてたと、先方はおっしゃっているのよ」
私はキョトンとした。スカートを貸すと言ってきたのは
より子の方である。これではまるでタカリではないか?
より子は急にやさしい理論的な物言いになった
「たかりや恐喝じゃあるまいし、弁償してくれとは言わないわ。
ただ解決方法はひとつだけあるの。あなたがその先輩と
会ってくれるだけでいいの。実はその先輩、芸能界とも関係があって
ジャーニープロの傘下の会社なのよ」
誰しも知っているジャーニープロダクション
私は好奇心から より子の先輩とやらに会ってみたい
もしかして 私の未来が開けるのではないかとドキドキした
翌日 私はより子と一緒にジャーニープロの傘下のビルに
行くことになったが、その途中 若い男性の声で
「困っています。助けて下さい」と呼び止める声がした
見ると ハーフモデルのような華やかな容姿の男性
今にも泣き出しそうな顔で
「今、バラエティ番組のようなものを撮影しているんだけど
誰も協力してくれる人がいないんですよ。
もしよければ 撮影させて頂けませんか
内容は 男の子の悩みを聞く優しい聡明美人ということで」
えっ 優しい聡明美人などと言われたことは初めての体験
すっかり舞い上がってしまった笑顔をちらりと横目で確認し
その男性は 後ろに止まっていたワゴン車のドアを開けた
すると中には 屈強な男性三人が座っていて
身動きできない状態だった
一瞬ヤバいと思ったとき「このソーセージをなめて下さい」
フランクフルトを渡された
すると急に 座席が揺れて私は前のめりになって
スカートから下着が丸見えになり
「ワ~ ヤバい」と言いながら スカートの前を押さえた
すると私を誘ったハーフモデル系から
「はい。これでOK。謝礼金を差し上げます」と茶封筒を
渡されたが 私は断って早々に車のドアから逃げるように
降車した なにか恐ろしいことが起こりそうな
身震いのする予感がした
一週間後 ある芸能事務所社長が詐欺で逮捕されたという
ニュースが報道されていた
見ると なんと私をワゴン車に誘ったハーフ男性が
アップで写っていた
「バラエティ番組を装い男の子の悩みを聞きますという手口で
道行く女性をワゴン車に連れ込み AVに利用した挙句
他の女性まで誘いだし 自殺に追い込んだ」
なんと そのバッグには私がパッケージに映っている
AVがアップで写り 私のフランクフルトを食べている写真のとなりには
「男の子の巨大なアレが大好きな パンツ見せたがり女性」と
記されていた
私はギリギリのところで AVに利用されるところだったが
なかには騙された挙句の果て 私のように写真が写った
AVが公けに販売され 仕事も解雇され 家族からも白い目で
見られ 自殺をはかった女性の親戚が訴えたという
なんと最近は未成年の男性をターゲットにゲイビデオも
販売しているという
いずれも本人は訴える能力がなかったので
まわりの大人が訴えたという
それから三日後 私にスカートを貸してくれた
元友人より子は練炭自殺をはかった
自殺未遂に終わったが やはりより子も歌手にならないかと
騙され レコーディング本番に行ってみると
そこはAV撮影現場だったという
AV出演を断ると「違約金三千万円を払え 親にまで請求に行くぞ」と
脅され「それが嫌なら 誰か手頃な女性を誘って来い」と言われ
私には悪いなと思いながらも 良心に蓋をして
私を誘ったというが なんと私が一人目だったという
まあ 二人目の犠牲者が出なかったのがせめてもの救いである
しかし 私も一歩間違えれば より子みたいになっていたかも
しれないと思うと より子を許す気になった
今 より子はキリスト教会に通っているという
もちろん 牧師には一切の過去を話した上で
「これからはイエス様と共に生きていこう
しかし もう二度と歌手志望などという甘いわなには
ひっかかってはならないよ
それと、個人でも物質でも建物でも
写真にとられるときは『肖像権同意書』にサインしなければ
ならないよ。そうしないと、相手も悪用し放題だからね」と釘を刺され
神様に委ねて生きていこうと誓ったという
私も子供時代 一度だけ行ったキリスト教会に
行ってみようかな
初めて手を組んでお祈りをしたとき
暗闇の向こうに 細い光の道が見え
なにかが私を呼んでいる気がした
未来は誰にもわからないが 神様にさえ従っていけば
暗闇の絶望状態に置かれても
やすらかに生きていけるに違いない
そんな確信が今 閃光となってひらめき
より子と一緒に ゴスペルを歌うことができたらと
友情のかけらを抱きしめていた
家事はみんな私の仕事というよりも 義務
家事のできない父親は 私がいなければ
一日たりとも生きていけない
もちろん遊びにいくこともできないし
これといった趣味もない
このまま 華やかさとは無縁の
地味な人生を歩んでいくのだろうか
私は 飲食店のアルバイトをしながら
自分なりに生計を立てていたが
将来の確証はなにひとつ見いだせなかった
そんなある日 アルバイト先で
自称金持ちのお嬢さんで 歌手志望だという
まあまあ美人の女子大生より子から
「私のお古だけど このスカート貸してあげるよ」という
誘いを受けた。見ると、いかにも高価そうな
レースとフリルをあしらった二段重ねになっている
ファッション雑誌に掲載されていそうなスカート
「えっ いいの? じゃあ、お言葉に甘えて
遠慮なくお借りします。あさって帰すね」
より子曰く「いいわよ。このスカートもう
はき古したものだから、あさってとは言わなくても
一週間後に返してね」
私の大好きな花柄がアクセントになっていて
内心ラッキーと心はアゲアゲに弾んだ
二日間 私は飲食店にスカートを着用してきた
「よく似合うよ」と言われ ちょっぴり得意になった
より子などは「私より似合うよ。ひょっとしてモデルに
なれるんじゃない?」などと歯の浮くような
お世辞を言い出す始末だった
しかし このスカートの貸し借りが
のちの私の人生を狂わせることになるとは
そのときは 夢にも思わなかった
三日後、私は約束通りより子にスカートを返却した
ところが次の日 より子は血相を変えて
私に詰め寄った
「実はこのスカートは、私の先輩のものだったのよ
あなたは返却するとき、スカートに染みがついたと
相手はカンカンよ」
「えっ、そんなバカな。染みなどどこにも
ついていなかったわ」
より子はなぜか堂々と「いや、虫眼鏡で調べたら
確かにシミがついてたと、先方はおっしゃっているのよ」
私はキョトンとした。スカートを貸すと言ってきたのは
より子の方である。これではまるでタカリではないか?
より子は急にやさしい理論的な物言いになった
「たかりや恐喝じゃあるまいし、弁償してくれとは言わないわ。
ただ解決方法はひとつだけあるの。あなたがその先輩と
会ってくれるだけでいいの。実はその先輩、芸能界とも関係があって
ジャーニープロの傘下の会社なのよ」
誰しも知っているジャーニープロダクション
私は好奇心から より子の先輩とやらに会ってみたい
もしかして 私の未来が開けるのではないかとドキドキした
翌日 私はより子と一緒にジャーニープロの傘下のビルに
行くことになったが、その途中 若い男性の声で
「困っています。助けて下さい」と呼び止める声がした
見ると ハーフモデルのような華やかな容姿の男性
今にも泣き出しそうな顔で
「今、バラエティ番組のようなものを撮影しているんだけど
誰も協力してくれる人がいないんですよ。
もしよければ 撮影させて頂けませんか
内容は 男の子の悩みを聞く優しい聡明美人ということで」
えっ 優しい聡明美人などと言われたことは初めての体験
すっかり舞い上がってしまった笑顔をちらりと横目で確認し
その男性は 後ろに止まっていたワゴン車のドアを開けた
すると中には 屈強な男性三人が座っていて
身動きできない状態だった
一瞬ヤバいと思ったとき「このソーセージをなめて下さい」
フランクフルトを渡された
すると急に 座席が揺れて私は前のめりになって
スカートから下着が丸見えになり
「ワ~ ヤバい」と言いながら スカートの前を押さえた
すると私を誘ったハーフモデル系から
「はい。これでOK。謝礼金を差し上げます」と茶封筒を
渡されたが 私は断って早々に車のドアから逃げるように
降車した なにか恐ろしいことが起こりそうな
身震いのする予感がした
一週間後 ある芸能事務所社長が詐欺で逮捕されたという
ニュースが報道されていた
見ると なんと私をワゴン車に誘ったハーフ男性が
アップで写っていた
「バラエティ番組を装い男の子の悩みを聞きますという手口で
道行く女性をワゴン車に連れ込み AVに利用した挙句
他の女性まで誘いだし 自殺に追い込んだ」
なんと そのバッグには私がパッケージに映っている
AVがアップで写り 私のフランクフルトを食べている写真のとなりには
「男の子の巨大なアレが大好きな パンツ見せたがり女性」と
記されていた
私はギリギリのところで AVに利用されるところだったが
なかには騙された挙句の果て 私のように写真が写った
AVが公けに販売され 仕事も解雇され 家族からも白い目で
見られ 自殺をはかった女性の親戚が訴えたという
なんと最近は未成年の男性をターゲットにゲイビデオも
販売しているという
いずれも本人は訴える能力がなかったので
まわりの大人が訴えたという
それから三日後 私にスカートを貸してくれた
元友人より子は練炭自殺をはかった
自殺未遂に終わったが やはりより子も歌手にならないかと
騙され レコーディング本番に行ってみると
そこはAV撮影現場だったという
AV出演を断ると「違約金三千万円を払え 親にまで請求に行くぞ」と
脅され「それが嫌なら 誰か手頃な女性を誘って来い」と言われ
私には悪いなと思いながらも 良心に蓋をして
私を誘ったというが なんと私が一人目だったという
まあ 二人目の犠牲者が出なかったのがせめてもの救いである
しかし 私も一歩間違えれば より子みたいになっていたかも
しれないと思うと より子を許す気になった
今 より子はキリスト教会に通っているという
もちろん 牧師には一切の過去を話した上で
「これからはイエス様と共に生きていこう
しかし もう二度と歌手志望などという甘いわなには
ひっかかってはならないよ
それと、個人でも物質でも建物でも
写真にとられるときは『肖像権同意書』にサインしなければ
ならないよ。そうしないと、相手も悪用し放題だからね」と釘を刺され
神様に委ねて生きていこうと誓ったという
私も子供時代 一度だけ行ったキリスト教会に
行ってみようかな
初めて手を組んでお祈りをしたとき
暗闇の向こうに 細い光の道が見え
なにかが私を呼んでいる気がした
未来は誰にもわからないが 神様にさえ従っていけば
暗闇の絶望状態に置かれても
やすらかに生きていけるに違いない
そんな確信が今 閃光となってひらめき
より子と一緒に ゴスペルを歌うことができたらと
友情のかけらを抱きしめていた
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