作詞コミュニティ Gunjo Lyrics

あっ　あの頃聞いたゴスペルが
今　バラエティ番組から流れている

思えば　ひと昔前　若さとバカさに任せ
僕は　繁華街のデパート前で
風俗雑誌の配布係をしていた

時給なんと千円　飲食店でバイトするより
はるかに楽な雑誌の配布係
始めは普通の求人雑誌だと思っていたが　
中身を見ると、女性専門風俗求人雑誌だった

三日で２万４千円稼げた
肉体的には楽な反面　なんとなくヤバさを感じ
こんなバイトをしているのがバレたら
将来　まともな就職などアブないんじゃないか
知り合いに見つかったら　僕まで風俗関係だと
疑われやしないか
だから　僕は出来るだけ顔を隠して
風俗雑誌を配り終えようとしたとき
ある女性のゴスペルソングが耳に
流れてきた

わが主イエス　わが主イエス　我を愛す
大昔　子供の頃　ドラマの挿入歌だったような
気がする
歌っているのは　一見生真面目そうな中年女性
一人楽譜を見ながらアカペラで　きれいなソプラノで歌っている
僕は思わず拍手をし「歌うまいね。もっと歌ってよ」
中年女性は　黙って微笑むだけだった

そんなことが三回続いた頃
風営法の影響で　風俗雑誌配布は禁止された
僕は完全に　ヤバい闇のような渦に巻き込まれそうな
恐怖にも似た予感がしていたので
内心ほっとしていた
そういえば昔「ゴスペルのあるところは天使が飛ぶ」
というが　天使の力によって風俗雑誌は追い払われたに違いない
しかし　ゴスペル女性の美しいソプラノを
聞くチャンスは失われた

そうだ　僕もゴスペルを歌ってみよう
主イエスに出会うことができるかな
ふと　バラエティ番組を見ると　なんとひと昔前出会った
中年女性が漫才師の司会の後で
ギター片手に　歌っているのだった

あの頃と変わらぬ美しいソプラノ
漫才師の拍手は　僕がした拍手と同類だった
僕もゴスペルを歌えば
風俗雑誌配布の隠蔽した過去よりも
イエスと共に生きることができるに違いない
過去は消せないが　イエスと一緒なら
過去の上に未来を作っていけるような
確信が僕の胸にひらめき　閃光が輝いた
　

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