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美人なお嬢様と奥手な男性の詩。
namakem0n0n39 投稿 - 2020/11/25 更新 - 2020/11/25 0 Comments 234 Views
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昔の話 ことばで言えない
牛乳に一つ、黒のインキを落としたような空の下
夏の匂いが近づく、葉桜の中で 
貴方は、私を見つけたの
男物に見えるハンケチを差しだしてきて
“落としましたよ”って
私のじゃないこと、貴方知ってたんでしょ
面白いウソをつくのねって
後でからかったけど、そのときははにかんで見せただけで

昔の話 ことばで言えない
夏の夜空の暗闇が、ミルキーウェイに映える頃
貴方の着た紺の甚平が、背景に溶けてしまいそうで
大輪の花火を後ろ髪で感じたとき
貴方の首に縋り付いた
困って見せた顔は、紅い光を帯びて綺麗だった

昔の話 ことばで言えない
ミンミンゼミが腹に脚をつけ、独りでに動く頃
ちっとも趣味じゃない帽子をくれたの
貴方のセンスがなさ過ぎて
吹き出しそうになるのを
一生懸命それで顔を隠したわ
それでも貴方は嬉しそうで
その日から、一等の宝物よ

昔の話 ことばで言えない
牛乳に一つ、黒のインキを落としたような空の下
なんにもない病室で、貴方を待つ
潮風と心地よさを運んでくる四角い窓は
目当ての人まで連れてきては、くれない
私の終わりはたった一人
貴方もどこかの墓石の下で眠っているのかしら



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