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今の世の中、誰にでも起こりうることを小説仕立て詩にしてみました。
kayuma 投稿 - 2020/08/15 更新 - 2021/05/19 0 Comments 358 Views
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 明男の話を一部始終聞いていた由岐は、十字架のペンダントを
いじったあと、手を組んで祈り出した。
「天にまします我らの神よ。復讐は人間のすることではなく
神のなさることである。人間は、自分の手を汚してはならないと
いいますが、私はこれ以上、心まで汚れたくないんです。
 だから、明男さんをも救って下さい」

 僕は、由岐に対して尊敬の念を抱いた。
 自分を裏ビデオに強制出演させた一員である明男を
許そうと努力している。
 こんなこと、常人に出来ることではない。

 明男は、急に由岐の前で土下座を始めた
「僕のやったことを許して下さいとは言いません。
 もう僕は、殺される運命。しかしその前に
神様とつながっていきたいです」
 そのとき、昔明男に参考書を貸したおばさんが
「そうですね。限られた命を神様とつなかって
生きていきましょう。
 私の家に来なさい。私は明日まで、あなたと
過ごしたいの」

 明男は、思わずのけぞった。
「僕は、半グレの下っ端ですよ。そんなことをすると
かえってあなたに迷惑がかかる。
 中学時代、参考書を貸して頂いたことは 今でも
感謝しています。さようなら」
 そういって去って行こうとしたが、おばさんは
そんな明男の腕をつかんで伝票を置いて店を出た。

 それから、半年後、僕はテレビのドキュメンタリー番組を見て
驚嘆の余り、頬をつねった。
 なんと、明男はクリスチャンになり、元アウトロー牧師の
いる教会に通いながらも、廃品回収の仕事をしているという。
 人相も変わり、一見明男とはわからなかったが、
目鼻立ちと、あごのほくろは紛れもなく明男に違いなかった。
 明男は、由岐を見習ったのか大きな十字架のペンダントを
ぶらさげていた。
 その教会には、明夫に参考書を貸したおばさんも参加して
いた。おばさんは、教会の掃除をしたり、教会員の世話係を
しているという。

 その教会には、牧師が元アウトローだけに、いろんな過去を
もつ人が出入りしていた。
 幸い、明男は覚せい剤にだけは、手を出さなかったが
なかには、そういった人もいるという。
 不思議と明男は、自分の罪の意識のせいか、
元覚せい剤中毒の人に対し、分け隔てなく親切だったという。
 番組中で明男は「将来は、神学校に行き、牧師になりたい」と
いう夢を語っていた。
 そのときの明男の目は、中学のときと同じ、少し気弱そうな
優しそうな眼をしていた。

 明男のような人は、世間からのバッシングを受けるのは
当然のこと、まさに自業自得であるが、
僕には明男を責める権利はない。
 なぜなら、僕も一歩間違えれば 明男のような運命を
辿ってたからしれなかったからだ。
 幸い、僕の場合は、母親の知恵と祈りのおかげで
アウトローにはならなかったが、僕は明男と知り合う直前の
中学二年の頃、非行に走っても仕方がないほどの
辛い時期があったのは事実である。

 次回は、僕の過去についてお話しよう。
 ただし、このことは、僕だけじゃなく、
一歩間違えれば、誰にでも起こる惨劇であり、
お互いの小さなボタンの掛け違いから、大きな誤解を生み
いつのまにか悪者扱いされていく。
 しかし、外でケガをして家庭や周りの大人に守ってくれる人は
幸いであるが、そうでない人は、世間の穴に
引きずり込まれていく。
 だから、僕はそれを防御するために、これからも
明男のような人を受け入れたいと思っている。

 ハレルヤ




 

 
 
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