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実話を小説仕立て詩にしてみました。
kayuma 投稿 - 2020/08/06 更新 - 2020/08/06 0 Comments 147 Views
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 あれはまさしく明男だ。明男以外のなにものでもない。
 眉毛の上に666という悪魔を連想させる
タトゥーを入れ、一見してわかる半グレの人相、中学のときより
恰幅が良くなり、アウトローの如く妙な威圧感を感じさせる
一般人とは一線を画した、地獄からやってきたような
暗黒の存在感。
 しかし、中学時代の面影は残っている。

 喫茶店をいったん出て行った明男は、
どうしたわけか 由岐のテーブルにつかつかと歩み寄って来た
 由岐は、明男を避けるように目を伏せた
 そして急に頭を下げ
「あのときは、すみませんでした。
 しかし、あの頃の僕はああする以外、ほかになかったのです
 一言 詫びを入れなければ、僕は本当の地獄行きになってしまう」
 そう言い残して 店を出た
 明男は、地獄をみた男だったのだろうか?

 一方、由岐は涙を流しながら 淡々と話し始めた
 由岐の話は、NHKのクローズアップ現代でも放映されていた
アダルトビデオ強制出演だった。
 歌手になりたいという希望をもっていた由岐は
都会の繁華街で、大手プロダクションの傘下会社から
スカウトされ、学生証を見せて一度だけ ボイストレーニングを
受け、歌手になれると信じこまされていた。
 由岐は、芸能事務所を名乗る事務所に手書きでサインした。
 そんなある日、貸しビルの一室にある事務所に行くと
そこはなんと裏ビデオの撮影現場で 
由岐は逃げ出そうとすると、屈強な半グレ三人に腕をつかまれ、
「ここにお前のサインがある。もし出演しないと
違約金が三千万と損害賠償代が生じることになるが、
お前の親に請求に行くぞ」と脅され 泣く泣く言われるがままに
レイプシーンを撮影させられたという
 その半グレの中の一人が明男だったのだ。

 僕は聞くに耐えなかった。
 しかし、今の僕にできることは、裏ビデオに強制出演
させられた過去よりも、目の前の由岐と向き合うことでしかなかった
 過去は変えられない。しかし、幸い由岐の両親が弁護士にかけあい
由岐の出演していた裏ビデオは、回収されたが
由岐はこれから、心の傷と闘って生きていかねばならない
 今の僕にできることは、母親が信仰しているキリスト教の
聖書を渡すことだった
「由岐、昔よりこれからに向って生きていこう。
 神様は祈ったら、いつも寄り添ってくれるよ」
 由岐は、首元にかけている十字架のネックレスを
いじりながら、僕の話を涙ながらに聞いていた

 
 
 

 

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