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暮れかけた夏のこと
kabocha0230 投稿 - 2019/08/17 更新 - 2019/08/17 0 Comments 165 Views
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うねる油膜が天井を這っている
午前零時の腐乱を啜り  
首をもたげるように
仰向け 半開きの口に どろりと

 どうして僕を見てはくれないのですか。この赤い赤い夕焼けの下で。あなたの瓦礫を除こうと手を伸ばしたのです。白目を剥いた夜が迫っています。早く、早く、早く。
 あなたの肩が火鏝を当てられたように跳ねました。堪らなく悲しかったのです。閉じた腕が。怯えた目が。逆光の中できらきらとしていました。恐るべき夜に爪先を浸け、潮垂れた姿は、きらきらと。

襖の穴にあなたが付着している
耳障りに鳴る床一面の
蹉跌をきたす紫が匂い立つ
不織布越しにあなたを呼び
手袋越しにあなたに触れた
跳ねる音 頬に濁る 生温く

虫の声が漏れ聞こえる
板張りの窓に月が染みる
じわじわと 夢うつつ
原色の侘しさに糸が切れる
色のない目蓋を指で下ろす
二度と開かないトロリーバッグと
此処に居なかった筈の
あなたを仕舞えない侭

咽び泣く顔に 浚われた心ごと
帰らないものを想う
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