good投票
まだこの作品をgoodと言った人はいません
うねる油膜が天井を這っている
午前零時の腐乱を啜り
首をもたげるように
仰向け 半開きの口に どろりと
どうして僕を見てはくれないのですか。この赤い赤い夕焼けの下で。あなたの瓦礫を除こうと手を伸ばしたのです。白目を剥いた夜が迫っています。早く、早く、早く。
あなたの肩が火鏝を当てられたように跳ねました。堪らなく悲しかったのです。閉じた腕が。怯えた目が。逆光の中できらきらとしていました。恐るべき夜に爪先を浸け、潮垂れた姿は、きらきらと。
襖の穴にあなたが付着している
耳障りに鳴る床一面の
蹉跌をきたす紫が匂い立つ
不織布越しにあなたを呼び
手袋越しにあなたに触れた
跳ねる音 頬に濁る 生温く
虫の声が漏れ聞こえる
板張りの窓に月が染みる
じわじわと 夢うつつ
原色の侘しさに糸が切れる
色のない目蓋を指で下ろす
二度と開かないトロリーバッグと
此処に居なかった筈の
あなたを仕舞えない侭
咽び泣く顔に 浚われた心ごと
帰らないものを想う
0 Comments