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高一の夏。交通事故で重傷を負ってICUに入り、そのまま息を引き取った地元の友達の女の子へ。
sabrina_no_hana 投稿 - 2019/06/29 更新 - 2019/06/29 0 Comments 493 Views
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八月の空に花火と共に打ち上がった齢十六の魂は
狂い咲く十一月の桜となってまた散っていったぞ
俺の胸の奥にはあれから変わることのない
生まれ変わった風景だけが居残っていた
愛のざれる音は
この期に及んでなんと美しいことか
君もきいているか
君も、君も、君も、君も。
この愛のざれる音を
きいているのか
この寂しい肉には
それはそれは真っ赤で
それはそれは長く険しい河が
今も流れ続けているという

脈打つ生に刻み込まれた優しさは
あの時死の淵で遊んでいた
ベッドの上の少女のあたたかな両の手だ
忘れられるはずが無い
握りしめた果てに
優しさを刻み込まれたことを
忘れられるはずが無い
目をつむり乍ら誰よりもその生命力を滾らせていた少女は
瞼の裏にこの世とあの世の光を飼い慣らしているようだった
愛のざれる音は
この期に及んでなんと美しいことか
君もきいているか
君も、君も、君も、君も。
この愛のざれる音を
きいているのか…

海鳴りも山鳴りも
詩にしてくれと言わんばかりに
血反吐を吐くほどうねり叫んでいた
親不孝者があんぐりと故郷の花を蹴散らしていた
無力に吠える野良犬が街灯なき街角にて孤独の闇に震えていた
どいつもこいつも俺も俺も俺も俺も だれびとの言葉も取るに足らんのだ
八月の空に花火と共に打ち上がった齢十六の魂は…ああ
愛のざれる音はこの期に及んでなんと…ああ
だれびとの言葉も取るに足らんのだ
この寂しい肉には
それはそれは真っ赤で
それはそれは長く険しい河が
今も流れ続けているが
クソくらえ!クソくらえ!クソくらえ!
君も…君もきいているか
君よ、君よきいているか
君も、君も、君も、君も。
この愛のざれる音を
きいているのか!
この愛のざれる音を…ああ

ギャッギャッギャッギャッギャッ・・・
仏壇に 顔を突っ込み号哭す
野ざらしとなれ 夕べの幸よ
ギャッギャッギャッギャッギャッ・・・
振り向けど振り向けど振り向けど
どこのどこにも霊なんぞおらんかった
畳の目を指でえぐり出し退屈をつぶす童子は
無垢と無知のあいだでその清い体を
常に揺れ動かしとった
ランランと揺れ動かしとった
外には季節はずれの雪が
遺灰のように降りしきっじょる
シンシンと降りしきっじょる
もうどうにでもなれと狂いかけたこの身にとって
心にもない空っぽな気晴らしはなによりも残酷やないんか
どうすりゃえんや どうすりゃえんやと堂々巡る
これも人生だと言うのか

八月の空に花火と共に打ち上がった齢十六の魂は
狂い咲く十一月の桜となってまた散っていったぞ
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